『幸福な食卓』読了

幸福な食卓

幸福な食卓

幸福な食卓 (講談社文庫)

幸福な食卓 (講談社文庫)

読んだのは図書館本、ハードカバー第三刷(!!)。
装幀 鈴木成一デザイン室 装画 いとう瞳
流石課題図書、と思いました(アマゾンレビューによるとそうらしいです)
映画化も漫画化もされてるんですね。初出は小説現代
幸福な食卓 (デザートコミックス)

幸福な食卓 (デザートコミックス)

乃木坂文庫にも
入ってる。
白石麻衣
私が撮った平積みの
乃木坂文庫の写真に
入ってないか
見ましたが、
その上の段に
飾ってあったのか、
分かりませんでした。
ので、ポスターの
写真貼ります。
白石嬢はセンター。

映画は、
北乃きい主演。
アンチの多い人で、
この人の全盛期と
匿名掲示板全盛期は
重なっていて、当時、
ひでーなーと、
2ちゃん読んで思った
ことあります。きい。

大竹聡の本*1で、
娘さんから瀬尾まいこ
勧められる
くだりがあり、
書名書いて
ないですが、
中学生が
主人公なので
たぶんこれだろうと
アタリをつけて
読んだ本。
大島弓子の漫画で、金子修介が映画化した『毎日が夏休み』の、
21世紀版のような導入でしたが、その後、
大島弓子よりもっともっと重いタマがほうられてきます。
こんな球を、逆らわず打ち返せる打者なのか瀬尾まいこ

最初のほうは、父親をやめた父親の再就職について、四十代のバイトって、
あんまいないと主人公は書いてて、でも別居中の母親はパートかけもち。
女性なら四十代バイトありの現実には疑問持たないんか、と、読んでて、
突っ込んだりしましたが、そのへんの、考えないことは考えないリズムが、
徐々にここちよくなってきます。配偶者控除の上限忖度して鑑みて、
確定申告したりしなかったりみたく複数バイト掛け持ちする、
主婦の知恵(マイナンバー導入以前)かな?とも思いましたが、
そんなの現実にあったか知らんし、余計なコメントは差し控えます。

頁88
「楽しかった?」
 三千円を払って、誠心会を後にした父さんが訊いた。
「まあね。これって宗教なの?」
「何かをあがめてる感じじゃなかったけどね。神様も出てこなかったし。ただ、みんな同じ考えを持って進んでる団体って感じみたいだな」
「そっか」
「母さんはこういう場所によく言ってたんだな」
 父さんがぼそりと言った。
 家を出る直前まで、母さんはこういう所を見つけだしてはせっせと通っていた。カウンセリングや宗教団体や占いまでありとあらゆる所に。だけど、父さんの自殺未遂を防げなかった自分を責める母さんの気持ちは、どこへ行っても、どれだけありがたい話を聞いても解消しなかった。

で、作者は大阪人で、本書執筆時点で京都のガッコに奉職のはずですが、
この小説はオール標準語で、しかもじゃんか言葉とか自然で、うまいです。
毎日が夏休み」といえば、あの頃の大島弓子の代表作、
綿の国星では、浪人生トキオくんが、軽い思春期のアレにはまり、
そこから脱出する、お話でもありました。本作の兄の独白読んで、
思い出しました。青春はなやましいですね。ハシカ。

ここからネタばれ含みます。

頁203
「父さんはさ、死にたかったのに、失敗してもずっと生きてる。だけど、大浦君は死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ。そんなの不公平だよ」

いやこれ主人公に苦難与えすぎだろ、神としての作者、ちょっと図に乗って、
登場人物が出会う、危機的事態トラブルのハードル上げすぎじゃね?
と思いましたが、話が落ち着いてきて、しずかにこの問題に、
オチがつけられてゆく展開、うまいと思いました。読者もこの本読んでいて、
身を焼かれるような主人公のつらさを共有し、そこからの解放も共有してゆく、
のじゃいかと思いました。よい結末。21世紀の課題図書。以上