「山中傳奇」(Legend of the Mountain)4Kデジタル修復・完全全長版 劇場鑑賞

山中傳奇【日本語公式サイト】

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新宿K's cinemaで昨年初夏予告を見て、見るかなあと思ってたのですが、見逃したと勘違いしまして(実際は今まさにケーズでやってた)シネマリンでもやっててくれてたので、シネマリンで見ました。劇終後外に出ると、次にかかるハル・ハートリーロングアイランド・トリロジー》テキサス出張篇「シンプルメン」のほうが、wktkな観客がぞろりぎらぎらでようけ待っていて、キン・フーのような枯れた監督枯れた技術を4Kリストアで朝イチで見る自分はそれでインカ帝国と思いました。

題名は「奇傳中山」と、右から左へヨコに流れるのですが、それが横書きでなく、一行ひと文字のタテ書きである、ということくらいは私も勉強したのですが、これくらいの平易な國語も、字幕なしにはけっこう分からんちんで、恥ずかしいと思いながらみました。大陸が文革で、あらゆる伝統文化滅茶苦茶ズタズタになった'70年代。正統中華振興中華の御旗の元、平易な官話で四海に伝統中國を宣撫せしめんとしたんだなあと。監督も外省人、キャストも外省人、きれいでゆっくりの國語(シルヴィア・チャンだけ先走って、暫停"zanting"をジャンティンとゆっていた。捲舌音でない音を舌まいてさべってしまう、よくあるミス)同じく妻の愛娘の時のセリフ、ジエングワイブーグワイ、の後の部分が分からず、帰って検索すればいいやと思ったのですが、検索結果がひとつでないので、がっかりしました。

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舞台はソン・ダイナスティー(上の予告動画はこの時点で誤字があり、「宋」を「宗」と打ち込んでいる)、宋代の、西夏と戦ってるあたり。全編台湾のどこでロケしたのかと思うくらい荒涼とした大陸のまだ緑の多いあたりのような風景で、コンクリで建てた中華建築がバンバン出てきます。ほんのちょっとだけ、台湾の農村部の豪農っぽい、福建式の屋根もありましたが、一ヶ所くらいかな。温泉もありませんし、畳の部屋の日本式家屋も御座居ません。当たり前か。で、西夏は燕雲十六州を取り合った遼(契丹)と違って西方の国家ですので、海なんかないはずですが、クライマックス、唐突に海と岩場と波打ち際が登場します。

怪談映画ってわけでもないので、怪談怪談で作ってる部分は、花彫のアツいのと温麺卓袱台、の部分くらいでしょうか。おいてけ堀です。お笑いの部分もない。たいていチャラい口先ぺらぺら三枚目がバカやって頭ぽかりとかの場面が中華映画ではあるものですが、ありません。たぶんキン・シオタニフー監督も溝口健二監督の雨月物語は観てると思うんですが、別に真似てるわけでもなく。扶桑は扶桑、震旦は震旦。東瀛には東瀛のオバケがあり、漢土には漢土のオバケがある。

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PennsylvAsia: Legend of the Mountain (山中传奇) and discussion with Pitt professor, March 11.

 http://img21.mtime.cn/mt/2012/02/11/013122.21243576_270X405X4.jpg三時間十二分えんえんしかめっつらの登場人物たちが入れ代わり立ち代わりナゾがナゾを呼び続け、意味もなく壁の一点や石段の一点をカメラはクローズアップして、そこで止めて、切り替わる。それで見てる方も集中切らさないで見れるんだから、たいしたものだと思いました。「選挙に出たい」が78分で、これが192分。

導士の正体が黒いヤギなのは、西洋魔術のようでした。日本にも神仏習合偽経聖徳太子が作ったお経とか、お父さんお母さんを大切にしよう経とか)がありますが、この映画も、老子ブッダに変じた、いや仏陀老子になった、みたいな、中華世界における道教と仏教の丁々発止のあれが世界観をなしていて、導士がお経を唱えるわ、僧侶も術を使うわで大変です。さすが漢訳仏教大国台湾。すぐ隣が地獄で、ごく卆(獄率)が家人を引いて通るとか、死体の人影とか、唐突に海だったとか、最高でした。

で、その仏教関係のことばで、二点。呉明才という人が演じた、番僧という役が、字幕で「ラマ僧」となっていて、チベット仏教の坊さんにはとても見えないので、どこがやーと思いました。顕教に対する密教という意味だったのかな。あと、オンマニパニペメフムという梵字のお経がそのままこうカタカナで字幕つけられていて、見てる人全員理解出来るという前提でこう字幕付けたんだなあと思いました。(南無)阿弥陀仏、オーメイ、トーフォ(ファ)ーは、なんまいだーとは字幕ついてませんでした。ヨウユエンチエンリーライシャンフイ"有缘千里来相会"のユエン、「縁」と言っているのに、字幕が「カルマ」になっていたのは、どんなもんだろうと思いました。カルマは「業」だろうと。ただ、「えにし」の縁は「みどり」緑に似てる字なので、空目をおそれてカタカナにしたのかなとも思いました。

最初、誰がシルヴィア・チャンか分からず、小青がそうなのかと思い、また随分カタいな~表情が、と思ったら別人でした。しかもカタいのもカタくないのも、みんな死人だった。おそろしい。以上

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