『私のワインは体から出て来るの』読了

 恩田陸がイギリスアイルランド旅行に持ってった本としてあげていたので読みました。

私のワインは体から出て来るの

私のワインは体から出て来るの

 

デザイン祖父江慎+柳谷志有(コズフィッシュ)カバーイラストしりあがり寿 写真種市幸治 座談会・後日談蒔田陽平 取材協力タケダワイナリー 葉山館 協力大人計画/ボン ヴィヴァン/オフィスまとば/片山彰乃(川島スタイリング)/鈴木 富(川島・片桐ヘアメーク)M・ROMAN(エム・ロマン)裏表紙はしりあがり寿の、紫の鞍と黄色のあぶみをつけたポニーみたいな白黒の馬の絵。背表紙に祖父江慎の遊びがあります。

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背表紙がくりぬきで、中にワイングラスの乾杯が入っています

初出は「TV LIFE」という雑誌の2000年から2002年までと書き下ろし弐品と語り卸の座談会。その雑誌を知りませんでしたが、学研(学研プラス)が出してるそうで、だからこの本も学研の本。

www.tvlife.jp

タイトルの由来は、新約聖書とは関係なくて、連載第一回、頁6で、川島なお美をテレビで見ていて、お笑い漫画道場の車だん吉アシスタントの頃から何も変わっていないのに、身体からワインが出てきそうなパワーがごいすー、というこの人なりの褒め言葉から来ています。この人の野望実現能力は本当にものすごくて、巻末に特別書き下ろしで、川島なお美片桐はいりと三人での山形県のワイナリー見学旅行記までつけています。せっかくの川島なお美が小さい写真ばかりで気の毒ですが、でもすごい。二人だと気づまりになるかもしれないので、共通の知りあいでバイプレイヤーの片桐はいりをサクッと巻き込むスマートな生き方。

川島なお美 - Wikipedia

頁193

だいたいよう、嫌いなんだよ打ち上げで赤ワインとか飲むヤツ。やめてくれよ、こっちまで悪酔いムードだよ。しかも味がどうとか料理がどうとかコメントしなきゃなんねんだろ? めんどくせえよ! 死んでも美味いなんて言わねえかんな!

片桐はいりが芝居で言いそうな台詞を、出発前の自分の心の声ですと後ろにつけて書いてますが、そんなとこ読み飛ばして、片桐はいりトークかと勘違いしてしまう。おそろしい作家。頁96、松尾スズキがキスシーンで、ちょっと本当にしてくんないと分かんないんだよねと言って稽古中ホンマにキスさせられる場面(頁95)でも、松尾スズキがキス魔で、弟体質の作者は松尾スズキとキス責めで唇がカサカサになったのかと、初読時は勘違いしました。

川島なお美は「のみた~い」とおねだりが得意だったと活写されていますが、作者もオゴラレ体質で、滅多におごることが出来ないんだとか。そういう人は成功しないと悲惨ですが、成功したので大丈夫。いい人生だな~。

作者三十歳から三十一歳までの記録。笑う犬の発見だか冒険(孤独死した知人が、谷啓が番組タイトルを音波で述べた後、タキシードで踊りだすゴマキの弟とソニンソニンを、当時はキャストとか全然伏せてたはずで、男装だったのに、あの子は女の子ですと言って的中させていて、ロリオタやばいと思ったのも懐かしい思い出です)と、池袋ウエストゲストパーク("IWGP"と略すそうです。初めて知りました)から、この連載中に「GO」の脚本で賞とって、そして木更津キャッツアイでのブレイクへと至る道程があますところなく読めます。氣志團との出会いが、三瓶とか斉藤清六といったその後は絡まない人たちとの出会いと横一線スタートライン同一で語られています。

 以下後報。

【後報】

宮藤官九郎 - Wikipedia

私はこの人を一生「みやふじかんくろう、略してクドカン」と読む気がします。アラカン。本書でこの人は自分の呼び方として「くんく」を発案してますが、広まらなかったみたいでした。つんくに音感が似てるし、「くんく」よくね? みたいなノリだったようで。週刊文春の連載で娘を「かんぱ」と呼んでるのはよかったですが、「くんく」は、どうかなあという。この人がNHKで深夜ときどきやる今夜も生でさだまさし眠いいねは、トリンドルの回がよかったです。港北PAという着眼点がよかった。番組としては成功しませんでしたが、それはしかたない。

www4.nhk.or.jp

www.nhk.or.jp

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この人はこの連載でウェイホイの上海ベイビーを買ってぜんぜん読まなかったと告白していて、本は読むヒマがないみたいです。まだケータイ全盛期ではないので、別の理由からだと思います。で、読書ではなく、ライブで発散してるみたいですストレスは。頁16で、ミッシェルガンエレファントの誰かが出ますが、私はこのバンドは、ヤンジャンの将棋漫画でしか知らず、動画など見てるはずなのですが記憶にありません。もっとバンドがばんばん出て来るかというと、意外となかったです。中原昌也の本も買う場面があり、その後でまだ読んでない宣言してますが、これはミュージシャンとしてではなかろうと。

頁75の写真と頁151の写真がよかったです。この頃既に携帯写メもデジカメもあったはずですが、ポラロイドカメラの写真がメインなのはなぜなのだろうと思わないでもなかったです。じゅん散歩もかたくなにポラロイドカメラですが、なぜでしょうか。温泉街のストリップ劇場でもあるまいに。

頁125の、禁酒中でジャニーズ茶なるお茶がおいしいという個所。ジャニーズ茶は私も読んでみたいです。ジャニーズ事務所からお歳暮お中元で届くお茶なんだそうです。クドカンというとトキオの長瀬、長津田と成瀬を足して二で割って芸名作ったみたいなナガセを重用してるイメージが私にはありますが、本書ではまだ木更津の岡田准一との出会いだけです。長瀬はまだクドカンの人生に登場しません。タイガー&ドラゴン。お伊勢参りへ行こうぜベイベー。ジャニーズの人はすごくまじめで時間もあいさつもきちんとしてると、三軒茶屋で仏語演劇のワークショップやってるような人が言ってました。そういうところからも高評価もらえるって、やっぱりすごいことだろうなと思います。全方向に努力してる感がある。先日稲垣吾郎FM横浜の午前中の番組で録音トークしてましたが、ぜんぜんそういう感じがなくてちょっと体育会系から反感もたれそうな感じで、しかし阪本順治監督の新作が、レビューではゴローちゃんの寡黙な炭焼き職人って、体格的にも、見る前はどうなのと思いましたが…みたいな前置き付きのレビューが目を引きつつ☆四つ越えしてるので、やはり世界は奇奇怪怪と思います。

のちに「ぐっさん」と呼ばれるようになる人物が、まだ綽名定まってなくて、「DonDokoDonの山口さん」(←字数取りすぎ!)と書かれています。頁146など。

ページ忘れましたが、「GO」のクボヅカが、喋り出すと止まらない人で、舞台挨拶で6~7分べらべらしゃべりまくってた話も印象的です。沈黙。のちの人生はすでに予見されていた。

そんな本でしょうか。酔って作ったネタは100%面白くないという意見には賛成。以上

(2019/2/15)