『秘密の花園』"The Secret Garden" by shion miura 読了

同じ作者の『ののはな通信』のあとがきで、前にもこの小説で、フランチェスカという横浜の女子校を舞台にした、とあったので読みました。サガ女でもよかったのに。だめなのかな。

magazineworld.jp

 電子版はないようで、読んだのは上のマガジンハウスの単行本。装幀―中島かほる 装画―落田洋子 第一部のみ「鳩よ!」に『あふれる』という題名で、2002年1~3月号に掲載されたとか。ほかは書き下ろし。

秘密の花園 (新潮文庫)

秘密の花園 (新潮文庫)

 

 第三部の途中であとがきを先に読んで、ほっとしてから第三部を最後まで読んだら、生みの親の作者が言ってるんだから太鼓判なんでしょうが、ぜんぜんちゃんと結末を書いてないので、ほんとに作者のいうとおり大丈夫なのか、少し不安です。いいのかこんなんで。さいご、教師まで失踪しよる。

JKとやってしまう教師の物語を、私は実はほとんど読んだことがなく、東直己『英雄先生』2005年くらいでしょうか。東直己がこの年は何故か道外を舞台にした作品を続けて発表した、そのひとつで、島根が舞台だったかと。ボクサー崩れの教師で、JKは巨乳。この、巨乳という要素(ようするにすごく大人のからだをしている)にかろうじて救われた感がありました。

作者はあとがきで、少女マンガが好きとあり、『純情クレイジーフルーツ』『櫻の園』『Blue』を挙げています。最後のは、魚喃キリコだったなと思いながら確認のため検索すると、千葉コズエという人の『BLUE』が出て、えっ、こういうのなの? とめんくらい、よくよく見ると本書刊行後の2009年連載開始なので、水卜伊那三浦しをんサンがあげたのはやっぱり魚喃だと確信しました。山本直樹も『BLUE』を描いてますが、少女漫画でないので、除外。

最初の話が、いちばんよい話でしたので、その後、次の話でもその次の話でも彼女が引き摺ってしまうのにやきもきし、はやく立ち直りよし、と思いました。私は露出狂に遭ったこともこともないし、話を聞いたこともないのですが、多いんでしょうか。コロナ感染者と露出狂目撃者は、どっちが多いんだろう。お医者さんごっこを幼少期こども同士でやった人とやってない人とで、その後が異なるかどうかの統計調査やフィールドワークがあったら見てみたいのですが、この話の主人公もやったことなさそうですし、やったことない人が今世紀は圧倒的多数なのでしょう。少子化以前からそうだと思います。

主人公がやったことというのはとても正義だと思うので、その後寝こんでしまう展開にほんとうにやきもきしたです。それとは関係なく、高校生なのに勃たなかった開明高校の男子高生は、そんなに過度の緊張をするなんて、なんでだろうと思いました。親が不在の自宅というシチュエーションがいけなかったのかもしれません。お気の毒と思いました。それで振られてしまうとは、おお勇者よ、振られてしまうとはなにごとだ、といって復活させてもらえばいいのにと思いました。

そういえばということで、ここで私の、数少ないヰタ・セクスアリスもとい色懺悔を書こうとしたのですが、まだリミッターがかかって、書けません。書けるのはあれかなあ、大学生のとき、年上の女子大生と京都旅行に行って、夜路上でキスした後、彼女の手を自分の股に導いたら、「いやーっ!!!!」と言ってそれっきりふられたくらいでしょうか。とてもアホ。色懺悔ブログというのは、ありそうなジャンルに思えるのですが、ありそうでないのかもしれません。

頁19で、なくなった母がしていたように掃除をする場面は、そういうものだろうと思いました。背中を見て育つ。

頁40で、目黒やら目白やらの五色不動が出てくる推理小説は、検索してみると、中井英夫『虚無への供物』みたいでした。

頁40

天上からかすかに投げ下ろされる運命の糸。それを丁寧に織りあげたタペストリーのように豪奢で繊細な探偵小説。悲しく美しいその物語では、

 そんな話なのかなあ。作者の趣味としてはそうなのだろうと思いました。

巻末に引用文献が三冊出ます。三冊とも、まったく私の生活圏外です。まんなかのだけ、かろうじてどこで出るかが分かる程度。

ハムレットマシーン : シェイクスピア・ファクトリー (未来社): 1992|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

現代歌人文庫 6 : 葛原妙子歌集 (国文社): 1986|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

岡井隆歌集 (国文社): 1977|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

頁141、大口の病院というと、この小説のあとですが、下記を思い出します。場所にいわくがあるとかどうとか、聞いた気もしますが、忘れました。ちがう話かもしれません。

dot.asahi.com

『ののはな通信』は大人になるまで続きますが、この小説は卒業すらしない時点で終わりますので、女子高生が中年になるまでを、やがて作者が書きたくなって、書いたのだなと思いました。逆に言うと、これは若いうちでしか書けないだろうと。多くの少女漫画がそうであるように。以上